diff --git a/main.md b/main.md index 7b69985..a4da204 100644 --- a/main.md +++ b/main.md @@ -1,4 +1,5 @@ -# 洪水災害時における避難支援のためのオフライン3Dハザードマップの開発と評価 +# 洪水災害時における避難支援のためのオフライン 3D ハザードマップの開発と評価 + ## 概要 本研究では洪水被害発生時に通信インフラがダウンした状況でも、スマートフォンを媒介としたデジタルハザードマップを通じて、危険地帯を把握するシステムの可能性について検討する。スマートフォンをインターフェイスとしたオフライン環境下で利用できる地図サービスとして、「Google Maps」、「Maps.me」、「あかりマップ」のような事例はみられるものの、App Store や Google Play といったアプリストアからの事前ダウンロードなしにオフラインで活用できる地図サービスおよび、ハザードマップサービスの事例は見られない。そこで、Raspberry Pi 4 を基調とした持ち運び可能な地図配信サーバー及び、ハザードマップに最適化させた地図データ、ハザードマップデザインの開発を行い、事前ダウンロードなしに通信インフラがダウンした状況でブラウザ経由でハザードマップにアクセスし、利用者が洪水災害時において危険地帯を把握できるかを検討する。この実装例を通じて、オフライン環境下でも地図情報にアクセスし、利用者が適切な避難ルートを検討する支援を行うことを可能とする。 @@ -20,17 +21,24 @@ ## 2. 先行事例・既往研究 ### 2.1. 洪水被害地域における通信インフラ環境 - 洪水災害発生時において、洪水被害の影響によりインターネットに接続することが難しい状況が発生する。本節では洪水被害環境下におけるインターネット接続に関して、どのような事例が発生したのか、また既往研究についてを明らかにする。 - 2020年7月4日に熊本県に豪雨が発生し、死者・行方不明者が69人がでる甚大な洪水被害が起きた。本豪雨の影響により氾濫流と呼ばれる、家屋をも流してしまう大きい威力の流れが発生するなど、氾濫地域に多くの影響を及ぼした。この豪雨の影響は住居等のインフラを破壊したのみならず、通信インフラにも影響を及ぼしたことが報告された。総務省からの通信に関した被害状況報告によると、2020年7月4日の豪雨による停電、土砂崩れ等によって、被災地域の携帯電話基地局が停波した。最大影響時にはNTTドコモ社で22市町村、KDDI(au)社で15市町村、ソフトバンク社で23市町村で電波障害が発生した(2020,総務省)。NTT西日本がリリースした本洪水被害における通信サービスの影響を記した報告書によると、インターネットサービス100回線でインターネット障害が発生したことが報告された(2020,NTT西日本)。上記の通り熊本豪雨では甚大なインターネット障害が発生し、オフライン環境が発生した。洪水発生時には停電、土砂崩れ等の影響のみならず、これらの2次的な影響によってインターネットが断絶または、復旧が長期化する懸念もある。甚大な洪水被害によって、交通インフラ等が機能が停止し、電力や通信インフラの従事者が通常業務を行うためやインフラ復旧のために現場に駆けつけることが難しくなり、定常業務および復旧作業を行うことが難しくなる状況が発生する(2019,Fekete)。このように、洪水被害は直接的または間接的に、インターネットインフラに影響を及ぼす場合がある。近年、地図を閲覧する媒体は紙からデジタルへと変遷してきた。日常生活における地図利用において、紙地図の利用は減少傾向にあり、一方でデジタル地図の利用は増加している(2018,株式会社ゼンリン)。また、紙媒体でのハザードマップは紛失しやいことも看過できない問題である(2014,関西大学 社会安全学部)。今後、紙地図の普及が増加する見込みは低い中で、洪水災害時のオフライン環境でのハザードマップへのアクセス手法を確立することは急務であるといえる。 - ### 2.2. オフライン地図の先行研究(書き途中です) - 2.1で論じた通り、洪水災害時のインターネット接続が困難な場合においてデジタルなハザードマップへのアクセスを確立することは急務である。本節では災害時のオフライン環境下におけるハザードマップ及びオフライン地図の先行研究を列挙するともに、既往研究における課題を整理する。災害時のオフライン環境でのハザードマップ利用を可能とするものとして、オフライン対応型災害時避難支援システム「あかりマップ」が挙げられる(2017,吉野孝 et al)。「あかりマップ」は災害時のオフライン環境での稼働に特化した災害時避難支援システムである。このシステムはAndroidのスマートフォン端末でのみ利用することができ、災害が発生する前に、ユーザーが自身の端末に地図情報、避難支援情報をダウンロードすることを想定している。この事前にダウンロードされた情報は、災害が発生し通信網が利用不可能になった場合でも、ユーザーが端末上でアクセスできるようになっている。端末上で表示される情報には、地図上の避難所の位置、AED(自動体外式除細動器)の設置場所などが含まれ、これらの情報はオフライン状態でも参照可能となっている。「あかりマップ」はオフラインで稼働できる設計になっている一方で、いくつかの課題が存在している。1つ目はベンダーロックインに関する課題である。「あかりマップ」はAndroidを搭載したスマートフォンのみで利用することができ、他のOSでの利用が不可能な設計になっている。2つ目はユーザーによる事前のダウンロードが必要な点である。2.1で述べた通り、洪水被害発生時にはインターネットに接続することが難しい場合が生じる。ユーザーが地図情報、避難支援情報を事前にダウンロードしていない場合、「あかりまっぷ」を利用することができない。 +洪水災害発生時において、洪水被害の影響によりインターネットに接続することが難しい状況が発生する。本節では洪水被害環境下におけるインターネット接続に関して、どのような事例が発生したのか、また既往研究についてを明らかにする。 +2020 年 7 月 4 日に熊本県に豪雨が発生し、死者・行方不明者が 69 人がでる甚大な洪水被害が起きた。本豪雨の影響により氾濫流と呼ばれる、家屋をも流してしまう大きい威力の流れが発生するなど、氾濫地域に多くの影響を及ぼした。この豪雨の影響は住居等のインフラを破壊したのみならず、通信インフラにも影響を及ぼしたことが報告された。総務省からの通信に関した被害状況報告によると、2020 年 7 月 4 日の豪雨による停電、土砂崩れ等によって、被災地域の携帯電話基地局が停波した。最大影響時には NTT ドコモ社で 22 市町村、KDDI(au)社で 15 市町村、ソフトバンク社で 23 市町村で電波障害が発生した(2020,総務省)。NTT 西日本がリリースした本洪水被害における通信サービスの影響を記した報告書によると、インターネットサービス 100 回線でインターネット障害が発生したことが報告された(2020,NTT 西日本)。上記の通り熊本豪雨では甚大なインターネット障害が発生し、オフライン環境が発生した。洪水発生時には停電、土砂崩れ等の影響のみならず、これらの 2 次的な影響によってインターネットが断絶または、復旧が長期化する懸念もある。甚大な洪水被害によって、交通インフラ等が機能が停止し、電力や通信インフラの従事者が通常業務を行うためやインフラ復旧のために現場に駆けつけることが難しくなり、定常業務および復旧作業を行うことが難しくなる状況が発生する(2019,Fekete)。このように、洪水被害は直接的または間接的に、インターネットインフラに影響を及ぼす場合がある。近年、地図を閲覧する媒体は紙からデジタルへと変遷してきた。日常生活における地図利用において、紙地図の利用は減少傾向にあり、一方でデジタル地図の利用は増加している(2018,株式会社ゼンリン)。また、紙媒体でのハザードマップは紛失しやいことも看過できない問題である(2014,関西大学 社会安全学部)。今後、紙地図の普及が増加する見込みは低い中で、洪水災害時のオフライン環境でのハザードマップへのアクセス手法を確立することは急務であるといえる。 + +### 2.2 オフラインで利用可能な地図サービス(書き途中) + +インターネットが断絶した際に、紙媒体でのハザードマップはオフライン環境下で利用できる地図ツールとして有効である。ただ紙媒体であるがゆえに広い範囲をカバーして記述しようとすると、紙のサイズを大きくする必要があり、携帯性が犠牲となる。実際に自治体が配布するハザードマップのなかには、サイズが大きいため携帯するには不便なものも存在する(2012,榎村)。ハザードマップは災害時において避難のマニュアルとして活用される。故に、避難の際に持ち運びが難しい形態であることは、本来の目的を水耕2.1で前述した通り、紙地図の利用は現象していくことが想定されていることもあり、オフライン環境であってもスマートフォン等でデジタル地図を利用する手法は不可欠である。本節では、既存のオフライン地図サービスについての動向をまとめる。2005年にサービスが開始されたGoogle Mapsは2022年には全世界におけるダウンロード数が10億件を超え、現代社会において最も使われている地図サービスの一つと言える(2022,日経新聞)。Google MapsはWebブラウザ、スマートフォン、タブレットに対応しており、インターネット接続を通じて地図を閲覧する。一方で、Google Mapsはオフライン地図サービスの利用も可能としている。インターネット接続が遅い、利用できない環境を考慮して予め任意エリアを端末に保存し、オフラインで使用することができる(2023,Google)。オフライン環境下であっても事前に利用したいエリアを保存しておくことで、ルート検索、ナビゲーション機能、地名検索も行える。このようにGoogle Mapsはオフライン機能を有しているが、これはあくまでもオプション機能であり通常はインターネット通信を基本とした利用が想定されている。オフラインでの機能に特化したデジタルマップの点でいうと最も有名なサービスの一つとしてMAPS.MEが挙げられる。MAPS.MEは契約する通信キャリアが利用できない地域に旅行する人々をターゲットに利用されており、執筆時点で1億4,000万ダウンロードを達成している(2024,MAPS.ME)。Google Mapsと同様に事前に任意のエリアをダウンロードすることで、オフライン環境下での利用が可能となる。MAPS.MEでは + +### 2.3. オフラインWebハザードマップの先行研究(書き途中) + +2.1 で論じた通り、洪水災害時のインターネット接続が困難な場合においてデジタルなハザードマップへのアクセスを確立することは急務である。本節では災害時のオフライン環境下におけるハザードマップ及びオフライン地図の先行研究を列挙するともに、既往研究における課題を整理する。災害時のオフライン環境でのハザードマップ利用を可能とするものとして、オフライン対応型災害時避難支援システム「あかりマップ」が挙げられる(2017,吉野孝 et al)。「あかりマップ」は災害時のオフライン環境での稼働に特化した災害時避難支援システムである。このシステムは Android のスマートフォン端末でのみ利用することができ、災害が発生する前に、ユーザーが自身の端末に地図情報、避難支援情報をダウンロードすることを想定している。事前にダウンロードされた情報は、災害が発生し通信網が利用不可能になった場合でも、ユーザーが端末上でアクセスできるようになっている。端末上で表示される情報には、地図上の避難所の位置、AED(自動体外式除細動器)の設置場所などが含まれ、これらの情報はオフライン状態でも参照可能となっている。「あかりマップ」はオフラインで稼働できる設計になっている一方で、2つの課題が存在している。1 つ目は特定 OS に依存している点である。「あかりマップ」は Android を搭載したスマートフォンのみで利用することができ、他の OS での利用が不可能な設計になっている。2店目はユーザーによる事前のダウンロードが必要な点である。2.1 で述べた通り、洪水被害発生時にはインターネットに接続することが難しい場合が生じる。ユーザーが地図情報、避難支援情報を事前にダウンロードしていない場合、「あかりまっぷ」を利用することができない。 + +### 2.4. 洪水ハザードマップにおける標高表記について + +### 2.5. ハザードマップに関する先行研究 - ### 2.3. ハザードマップに関する先行研究 - ハザードマップがなぜ必要なのか。どういった機能を有しているのか - ハザードマップの定義。どの災害ステータスで使われるものなのか。減災、防災のどちらの面で機能するのかを述べる。 -- 現状のハザードマップに足りていない情報について(標高データについて触れる) - 徒歩での避難の際、洪水被害の際は高い場所に避難することが求められるが、高さ情報が直感的にわかるハザードマップは少ない。どの時点で活用できるマップなのかを明示する。 + ハザードマップの定義。どの災害ステータスで使われるものなのか。減災、防災のどちらの面で機能するのかを述べる。。 - 紙地図で配布する問題点について 広域にすればするほど詳細が見えづらい地図になる。耐水紙でないハザードマップが多いこと。 - 現行のハザードマップの掲載情報にかかる問題点について @@ -41,11 +49,14 @@ ## 3. 提案手法 ### 3.1. リサーチクエッション + ここにリサーチクエッションを盛り込む +### 3.2 システム設計について + #### 3.1.1. オフライン環境下での稼働について -本節ではどのように、オフライン環境下でのハザードマップを配信するシステムを構築したかについて述べる。本研究では、低コストでありながら高い汎用性と拡張性を持つマイクロコンピューターであるラズベリーパイを用いた地図サーバーの構築を試みた。ラズベリーパイは、教育や研究、趣味のプロジェクトなど、多岐にわたる分野で使用されているマイクロコンピューターである。ラズベリーパイは、そのコンパクトなサイズにも関わらず、高性能の処理能力を有しており、全国津々浦々どこでも手軽に入手可能である。ラズベリーパイをアクセスポイントとして機能させることにより、ラズベリーパイを基点としてイントラネットを構築し、オフライン環境下でもスマートフォンを通じてアクセス可能な地図サーバーとしての役割を果たすよう設定した。アクセスポイントとは、ワイヤレスネットワークにおけるデバイス間の通信を仲介する装置であり、この場合ではラズベリーパイがその機能を担う。これにより、オフライン状態であっても、スマートフォンやタブレットなどのデバイスから地図情報にアクセスできる体制を構築した。システムのホスティングにあたり、Apache2、hostapd、dnsmasq と呼ばれる三つの主要なオープンソースソフトウェアパッケージを採用した。Apache2 は世界で最も普及している Web サーバーソフトウェアの一つであり、ユーザーリクエストに応じて Web ページや画像、その他のデータを配信する機能をラズベリーパイに提供する。hostapd は無線 LAN デバイスをアクセスポイントとして機能させるためのソフトウェアであり、この研究ではラズベリーパイに接続されるスマートフォン等の各デバイスの管理を担う。dnsmasq は、ネットワーク上のデバイスに対して DNS サーバーの役割を果たし、動的に IP アドレスを割り当てる機能を提供する。これらのパッケージを組み合わせることで、ラズベリーパイは単なる Web サーバーを超え、総合的な通信ソリューションとして機能し、結果として災害時においても避難者のスマートフォンを通じて地図データを提供することが可能になった。避難者はラズベリーパイに付随している QR コードをスマートフォンのカメラでスキャンすることによって、ラズベリーパイと接続し、ハザードマップの閲覧が可能となる。 +本節ではどのように、オフライン環境下でのハザードマップを配信するシステムを構築したかについて述べる。本研究では、低コストでありながら高い汎用性と拡張性を持つマイクロコンピューターである Raspberry Pi4(以下、ラズベリーパイ)を用いた地図サーバーの構築を試みた。ラズベリーパイは、教育や研究、趣味のプロジェクトなど、多岐にわたる分野で使用されているマイクロコンピューターである。ラズベリーパイは、そのコンパクトなサイズにも関わらず、高性能の処理能力を有している。ラズベリーパイをアクセスポイントとして機能させることにより、ラズベリーパイを基点としてイントラネットを構築し、オフライン環境下でもスマートフォンを通じてアクセス可能な地図サーバーとしての役割を果たすよう設定した。アクセスポイントとは、ワイヤレスネットワークにおけるデバイス間の通信を仲介する装置であり、この場合ではラズベリーパイがその機能を担う。これにより、オフライン状態であっても、スマートフォンやタブレットなどのデバイスから地図情報にアクセスできる体制を構築した。システムのホスティングにあたり、Apache2、hostapd、dnsmasq と呼ばれる三つのオープンソースソフトウェアパッケージを採用した。Apache2 は世界で最も普及している Web サーバーソフトウェアの一つであり、ユーザーリクエストに応じて Web ページや画像、その他のデータを配信する機能をラズベリーパイに提供する。hostapd は無線 LAN デバイスをアクセスポイントとして機能させるためのソフトウェアであり、この研究ではラズベリーパイに接続されるスマートフォン等の各デバイスの管理を担う。dnsmasq は、ネットワーク上のデバイスに対して DNS サーバーの役割を果たし、動的に IP アドレスを割り当てる機能を提供する。これらのパッケージを組み合わせることで、ラズベリーパイは単なる Web サーバーを超え、総合的な通信ソリューションとして機能し、結果として災害時においても避難者のスマートフォンを通じて地図データを提供することが可能になった。避難者はラズベリーパイに付随している QR コードをスマートフォンのカメラでスキャンすることによって、ラズベリーパイと接続し、ハザードマップの閲覧が可能となる。 #### 3.1.2. 紙地図との違いについて @@ -68,8 +79,8 @@ ハザードマップの役割の一つに、避難時に適切な避難行動を促すことが挙げられる。避難時に留意すべき点や避難ルートについての知識は、防災訓練を受けることによって身につけることが一般的である。しかし、防災訓練を体験してから時間が経過することで、避難時に関する知識は忘却されることは先行研究により指摘されている。このことから、ハザードマップは避難に関する知識が無いまたは乏しい人でも、災害時における危険地帯や避難行動を促す必要がある。文京区が公開している洪水ハザードマップでは、これらの情報がハザードマップの上部に表示されていた。掲載されている文章には、表示している浸水域と浸水深の説明のみされており、避難時に避けるべき箇所の警告がなされていない。これを踏まえ本研究では、国土交通省と気象庁が発信している洪水時の危険地帯をもとに、低地と傾斜地を危険地と定義し、その警告文を以下の図のように掲示した。警告文はタップすることで表示・非表示を切り替えられるように設定した。 ## 4. 実験・検証 -(ここで検証デザインについて説明) +(ここで検証デザインについて説明) ### 4.1. オフライン環境の構築 @@ -95,5 +106,7 @@ ### 5.2. 今後の課題と展望 ## 6. 考察 + ## 7. 謝辞 + ## 8. 参考文献